MOSSA11号です
95歳まで生きるには、65歳までに2000万の蓄えが必要と試算した政府の金融審議会報告書が話題になっています。
野党は年金制度の崩壊だと批判し、政府・与党は報告書を拒否しています。
【金融審議会とは?】
金融制度や資本市場など国内金融関係の重要事項について、調査・審議を目的に設置された、内閣総理大臣、金融庁長官および財務大臣の諮問機関。
総理大臣、財務大臣が、有識者の意見を伺うために設置した諮問機関の提言を拒否?!
金融庁はそんな無駄な報告書をまとめたの?
何が正しいのか、MOSSA11号なりに判断するため、まずは問題になっている金融庁報告書を読んでみることにしました。
【先に、MOSSA11号なりの結論】
★この報告書は、来る高齢化社会において、国民は貯金だけではなく投資に金を回しましょう、そのために金融サービスはどうあるべきか、政府はどのような制度などを整えるべきかをまとめたもの。
★「65歳までに2000万」は、貯蓄や退職金ゼロ、年金オンリーで30年働かず暮らすという楽観的なケースの試算額であり、その記述だけが切り取られ、クローズアップされているように思える。マスコミ騒ぎすぎ。
★報告書の内容自体は、過去の総務省や厚生労働省のデータを基にしたもので、今回初めて国民に示されたようなものではなく、野党の批判は的外れもいいところ。
★同時に、政府・与党が受け取りを拒否するような報告書でもなく、審議会の有識者や金融庁事務方が可哀想に思えてくる。
★政府・与党、野党の争いは、不毛以外の何者でもない。
MOSSA11号的には、報告書を受けたうえで、現役・若年層の資産形成のための枠組や、高齢者が働きやすい環境の整備をしっかり行う、と対応すれば何ら問題ない気がする。
金融審議会
市場ワーキンググループ報告書
高齢社会における資産管理・形成
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
○はじめに
本報告書は、人口減少・高齢化社会における金融サービスはどうあるべきかを提言するもの。
○現状確認
・人口の動き
長寿命化、高齢者が突出した人口比率、認知症の人の増加などにより、
高齢者が金融機関に赴くことができない
認知症の人の資産管理に支障が生じる
などの金融面での影響が想定される。
・収入・支出の動き
無職の高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上の二人世帯)の平均的な月間収支は、収入(年金等)約21万円、支出約26万円で、毎月約5万円の赤字である。
この赤字は、保有する金融資産で補填していることになる。
一方、70歳前後でも、体力・思考レベルの高い状態で就労している比率は世界的に高く、これは将来的にも同傾向。
最近の働き方として、転職や副業など働き方が多様化しており、これは長く働く上でのメリットであるが、一つの企業に長年勤めて受け取る退職金が少なくなるというデメリットでもある。
ところが、退職金制度がある企業は減少、退職金の金額自体も減少している。
(デメリットではなくなってきているということか?)
・金融資産
一概にはいえないが、総じて、高齢者が若年者より多くの資産を有しており、今後もその傾向は続く。
65歳時点における平均的な保有金融資産は、夫婦二人世帯で2252万円。 上述の月5万の赤字の場合、30年で約2000万円の取り崩しが必要。
・金融環境についての意識調査
調査では、30代以上のどの世代も、「老後の生活設計を考えたことがあり」、「老後が不安」という回答割合が高い。
不安の要因の第1位は、30~50代では「お金」、60代以上では「健康」。
また、老後にいくらぐらい資産が必要と考えるかの回答と、現在の個人の金融資産との間に大きな差額が生じている。
例えば、40代は、老後に約3000万必要と考えているが、40代の現在の金融資産は約800万程度で、2000万以上の開きがある。
これを解消するためにはどうすべきかの調査では、「働く期間を延ばす」「生活費の節約」「若いうちからの資産形成」という回答が主となっている。
ところが、実際に資産形成として投資を行っている割合はかなり低い。
その理由は、資金不足、投資に関する知識不足などである。
現状、金融機関が、顧客である国民が不安を抱えている老後のための資産形成についての悩み、要望に寄り添えていないと言える。
国民は、各個人で、今後の労働世代の縮小による年金給付額の調整(減るってことかな)を考慮し、自ら望む老後の生活スタイルに照らし合わせ、就労の継続や資産形成などの「自助」を充実する必要がある。
(ある程度余裕のある老後にしたいなら、70歳まで働いたり、若いうちから少しずつ投資しないとね、ってことか)
○どう対応する?
・国民の心構え
現役期:預貯金と、積立・投資による資産形成をできるだけ早期に開始する
リタイヤ期:退職金の有無を踏まえ、中長期的な収支の改善、資産運用の見直し・継続を行う
高齢期:資産の計画的な取り崩し、認知・判断能力の低下を見据えた取引などの簡素化を行う
・金融サービスのあり方
顧客の長寿命化、認知・判断能力の低下を踏まえ、
顧客が利用しやすいサービスの提供と分かりやすい説明
明確な手数料 高リスク商品を販売しない
などを基本に、国民のライフステージ(現役期、リタイヤ期、高齢期)に応じてふさわしいサービスを提供する。
・必要な環境整備
NISA、iDeCoの利用者の拡大のための普及、制度の改善
住宅資産の有効活用のため、リフォーム市場、中古住宅流通の適正化、活性化
金融サービスのアドバイザー(ファイナンシャルプランナーなど)の充実 高齢顧客の保護のあり方の検討
○終わりに
高齢化社会、多様なライフスタイル、これまでの標準的なモデルはもはや空洞化している現在、国民は将来のライフ・マネープランを現在の「我がこと」として捉え考えること、金融業者は「我がこと」に寄り添った顧客本位のサービスを提供することが重要である。
【65歳までに約2000万必要の根拠は】
65歳以上の無職2人世帯の月平均収支からはじき出された月5万赤字の生活が、
30年続けば、
2000万(正確には約1800万?)の資産取り崩しが必要
ということ。
65歳を過ぎて働いたり、会社員が退職金を受け取ったり、財産分与などは考慮されておらず、あくまで限られたケースの試算。
ことさら、「65歳までに2000万」だけをクローズアップすることに意味は無いと思えます。
単純に考えると、65歳以降に、再就職やパートなどで月10万の収入上積みを5年続けることができれば、10年分の赤字が解消されるということかな。
【では、月5万赤字の根拠は】
2017年総務省の家計調査より
統計局ホームページ/家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)
「二人以上の世帯」 → 表番号9「(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状況別」
夫65歳以上、妻60歳以上の無職2人世帯
年金メインの収入21万に対し、支出26万。
支出内訳
食費 6.4万
住居 1.4万
水道光熱 2万
家事用品 1万
被服 0.6万
医療・保険 1.5万
交通・通信 2.7万
教養娯楽 2.5万
その他消費 5.4万
非消費支出 2.8万
なんか、、、ちょっと努力すれば、収入内でやりくりできるんぢゃ??
(こんなにかかるのかね?って項目があるような。)
【改めて、MOSSA11号なりの結論】
★この報告書は、来る高齢化社会において、国民は貯金だけではなく投資に金を回しましょう、そのために金融サービスはどうあるべきか、政府はどのような制度などを整えるべきかをまとめたもの。
★「65歳までに2000万」は、貯蓄や退職金ゼロ、年金オンリーで30年働かず暮らすという楽観的なケースの試算額であり、その記述だけが切り取られ、クローズアップされているように思える。
その数字だけでマスコミ騒ぎすぎの感。
就労状況などによって、いくらでも金額は変わりうるし、今さら、「聞いてないよぉ‼︎」と騒ぐ人がそんなにいるとも思えない。
★報告書の内容自体は、過去の総務省や厚生労働省のデータを基にしたもので、今回初めて国民に示されたようなものではなく、野党の批判は的外れもいいところ。
オブザーバに厚生労働省が入っているし、過去の審議で厚労省資料も示されている。
年金を所管している厚労省も、この報告書に異を唱えていないと思われる。
★同時に、政府・与党が受け取りを拒否するような報告書でもなく、審議会の有識者や金融庁事務方が可哀想に思えてくる。金融庁としても、至極真っ当な報告と考えていると思われる。
★政府・与党、野党の争いは、不毛以外の何者でもない。
MOSSA11号的には、報告書を受けたうえで、現役・若年層の資産形成のための枠組や、高齢者が働きやすい環境の整備をしっかり行っていく、と対応すれば何ら問題ない気がする。
年金問題の根本的問題ではないところに焦点が当てられるこたは甚だ不本意に思いますので、みなさま、ご自分で確認・判断しましょう。
最後まで、ありがとうございました!!